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なぜデザイナーはあなたの質問に眉をひそめるのか。

デザイナーと仕事をしていて、彼らを「プライドが高く気難しい、話が通じない人種だ」と考えたことはないだろうか。
一部人間性に問題のあるデザイナーがいることは否定できないが、彼らのいらだちにはたいてい、正当な理由がある。

サイト掲載用の画像について、私の方でも考えてみたいです。
利用可能な画像サイトを教えてください。

素材サイトのイラストなどを使ってかわいくしてほしいです。

ご提案いただいたフォントですが、どれも少しインパクトに欠けるような気がします。私の方でも検討したいので、参考までに候補のフォント一覧をいただけませんか?

もしもあなたがデザイナーに対してこうした言葉を発したことがあるのなら、あなたはデザイナーに眉を顰められてもしょうがないことをしている。
 
こんなにも下手に出て丁寧にお願いしているのに、なんと心の狭い…!とお思いだろうか。

いまからその理由をご覧に入れよう。

 

これらの言葉を投げかけられたデザイナーの脳内はこんな感じである。

  • なぜあなたは今の今まで(私が提示するまで)サイト掲載画像について考えもしなかったのか?
  • 金額を問わないのなら、利用できる画像サイトは無数にある。条件の提示もなしに、何を提案しろというのか?
  • 素材サイトも同様に無数にある。こちらの提案が飲めないのなら、あなたの考える「テイスト」とやらを一部で良いので提示してくれ。話はそれからだ。
  • どうやら私の「かわいい」とあなたの「かわいい」は一致していないようだ。それを言語して私に共有できないのであれば、今後も私がそれを体現することは不可能に近い。
  • 世の中には無数のフォントがある。デザイナーはその中でも日本語文字を含み、最もデザイン性と可読性に優れ、商用利用も可能なフォントを厳選して提案している。それを、「参考」のためだけに(参考文言すら、こちらが要求してから初めて考え出すようなクライアントに対して)提示するのがどれだけ時間の浪費になるか、想像できるだろうか。
  • あなたが気軽に聞いてくるこれらのの「参考リンク」だが、デザイナー本人は日々更新されていく様々な情報を吟味し、取捨選択しながら蓄積している。これらの磨き上げられた情報をなぜ、(日々切磋琢磨し合う同業者のためならばともかく)この依頼が終われば二度とそのサイトを閲覧することもなく忘れ去るであろうあなたのためにまとめる必要があるだろうか。
  • ましてそのサイトの中から画像やフォント、素材を取捨選択するための基準を考え指導するなどという手間は、(あなたが今後私のデザインアシスタントになるのでもない限り)私にとっては時間の浪費以外のなにものでもないし、教える義理もない。せめてあなたが私の提出した画像を「よくない」と判断したそのセンス()をもって、黙ってえいやで選んでいただきたい。

…私がこれだけの不満を抱くのには理由がある。

仮に私があなたに言われたとおり「参考」資料を提示したとしよう。しかしあれやこれやと時間と労力をかけた後、あなたが最後に言うセリフは決まっているのだ。

 

「やっぱり最初のデザインでお願いします。」

 

これを「浪費」といわずして、なんと言おう。

 

無論、クライアントに「納得」して納品物を受け取ってもらうことが、デザイナーのひとつの努めであることは否定しない。
だがしかし、世の中にはプロを全面的に信頼して任せることができるタイプと、自分の目で見ないと信じないタイプとがいる。
 
多くの場合、前者に対してはそのデザインに至るまでの過程、ロジックをカンタンに説明し、相手からのいくつかの質問に答えるだけで十分納得してもらうことが可能だ。
後者(つまりあなたのことだが)の場合「そのデザインに至った以外の可能性の選択肢」を、本人が自らの目で目撃しない限り、そのデザインが「いい」か「悪い」かすらコメントできないのである。

 

そしてこれは暗に、あなたが「デザイナーの判断基準を信用していない」ことを意味する。

 

いやいや、それはクライアントの信頼を勝ち取れていないデザイナー自身が悪いという声もあろう。
それについてはごもっともという他ない。本来クライアントは信用のおけないデザイナーに依頼をするべきではないし、デザイナーは自分を信用していないクライアントの依頼は受けるべきではないのだ。

 

しかし時は既に遅く、悲劇的物語は始まってしまっている。

 

100%とは言わないが、多くの場合、あなたが1週間かけて行なう漠然とした検討()結果は、私が3時間かけて行なう論理的検討結果を超えることはない。
理由はカンタンで、この案件についてだけ行なうあなたの検討時間は、私がこれまでに積み上げてきた思考投資時間に遠く及ばないからである。

 
通常デザイナーは、コンセプトメイキングや基本的なテイストの合意などを重ね、思想設計を行なった上でデザインを組み立てていく。
こんな世界観、こんなターゲットで、こんなビジョンを持ち、こんな大きさの、こういった形状のお城を作ろう、と考えて積み木を重ねていくのである。
抽象度の高いままの状態で意思決定を行ない、ひとつの理想的未来像にたどり着くための道筋を作り上げるのだ。

 
しかし時にはこの未来像があやふやなまま、とにかくシゴトを進めなければいけないケースもある。
あなたは、マク○ナルドさながら、「世界観はこの中からお選びいただけます」「ターゲットはABCどのパターンにしますか?」「ビジョンはこちらにご用意しました」という、近視眼的なメニューの羅列を望んでいる。一方、デザイナーはゼロから最適解を導き出そうと試みている。
この「選んだ」を「創った」と履き違え、さながら「自分が創造主だ」と言わんばかりに振る舞おうとするクライアントに遭遇した時、デザイナーはひどくストレスを抱えることになる。

 

デザイナーはいい加減、「自分も一緒に作(った気にな)りたい」クライアントにうんざりしているのである。


 

…想像してみてほしい。
あなたは私に、あなたの代わりに積み木を作ってほしいと依頼をしてきた。
なにを作りたいのか?なんの目的で、誰のために、どんな形の、どんな大きさのものを作りたいのか?どんな色が好みか?と尋ねる私に対して、「よくわからない」とあなたはいう。
 
「好きに作っていいよ。でも、とにかく素敵なお城にしてね!」
 
しかたなしに私が積み木を重ね始めると、あなたは
「あっそこはそれじゃなくてこっちの積み木にして!」
「それの上にはこの色がいいな」
「あっやっぱりここを変えてみてよ」
と逐一口を挟んでくる。

 

私が「そんなに口を出したいのなら自分でやれば?」と言おうとするたびに「ゴメンゴメン、口出すのは今のとこだけ!さぁ、続きをどうぞ!」とあなたは先を促すだろう。
この先も同じことを繰り返すのを知りながら、私はしぶしぶ先を続ける。
 
整合性もクソもないあなたの意見をそれなりに聞き入れながら、どうにか目的達成に近づけようと考えを巡らせて私が築いた規則性やルール、美学を、あなたは常に思いつきひとつで覆そうとする。
 
私の取れる手段は3つだ。
 
ひとつは、クライアントの要望を完全に無視すること。
…しかし元をたどれば、積み木を作りたいのは私ではない。無視して作るのは本末転倒も甚だしいので却下。
 
ふたつめは、クライアントの言うままに手足を動かす傀儡になること。
…これがやりたいのであれば、クライアント本人がやればよく、作業を代行することは失敗の責任が私に寄るだけで私にとってはなんのメリットもない。却下だ。
 
みっつめは、この舞台から降りることである。
…ふむ、それがよろしい。
 
ついにうんざりした私が作り手の座を明け渡すと、あなたは突然気付いてのたまうのである。
 
「どんなお城にしたらいいかなぁ?形は?色は?この組み合わせってあってる?これの上にこれを積むのってどう思う?あれ?どんな大きさにお城にするんだっけ?…うーん、やっぱりキミが最初にやろうとしたとおりに作ってみて!」
 
そして振り出しに戻る。


 
ノープランのまま依頼にやってきて、眉を顰められるクライアントというのは概ねこうした具合である。
 
私は不思議に思う。あなたはそれまでなにをどう「考え」て、あれやこれやと口を出していたのだろうか。
 
誤解をしているように見受けられるので言うのだが、あなたがやっているのは「依頼」でもなければ「指示出し」でもないことに気付いているだろうか。
「思いつきを口に出している」。あなたがしているのは文字通りそのまま、それ以上でもなくそれ以下でもない、それだけなのである。
 
もしも(誤解であるが)あなたの「指示」でプロジェクトがうまくいっているように見えるのであれば、それはデザイナーが「思いつきを口にした」あなたの言葉に耳を傾け、全力で好意的に解釈した後に頭をフル回転させて規則性を発明した結果に過ぎない。
 
デザイナーは常に、あなたに変わって思考を巡らせている。
世界観を構築し、ターゲットユーザーを設定し、膨大な選択肢の中からひとつひとつを慎重に吟味、選択しながら、最終的な大きさ、色、形、があなたにとって理想のものになるように構想を練っているのである。
 
大切なことなのでもう一度言うが、デザイナーはいい加減「デザインごっこ」がしたいクライアントにうんざりしている。
 
その結果、あなたの性質を知った以後、デザイナーは「すみません、仕事が立て込んでいて…」とか「その分野には詳しくないので…」といった当たり障りのない理由を提示してあなたからの依頼を断ることになるだろう。
もちろん、「代わりのデザイナーを紹介してほしい」と言われて紹介するデザイナーがいるはずもない。自分が受けたくない仕事は、仲間のデザイナーだって受けたくないのである。
 
また、少しでも話を聞いてしまえば、あなたが「相談」の名目で連絡してきては、こちらにとってなんの利益にもならない質疑応答を繰り返すことも経験上わかっているため、うかつに話を聞くこともないだろう。
 
ここまでを読んで、「なんて傲岸不遜!面倒くさいやつだな」と感じたあなたは正しい。
そんなあなたには、デザイナーに頼らず全てを自分で作ってみるつもりで、ゼロからデザインに挑戦することをオススメする。
 
仮ではなく、本気のデザインである。
そのまま実装までできればなおいいが、それがムリだった場合に初めて、その(あなたが思い描いた)デザインを持って、デザイナーに相談してみてほしい。
 
その時、あなたは(40%くらいの確率で)デザイナーに眉を顰められなくなっているだろう。